夢でいいから~25歳差の物語
「青山さん、様子がおかしいんです。以前、お会いした時はやり場のないストレスと申し上げましたが、それにしてはどこかおかしい」


「そんな」


そういえば先生、「悪いのは兄貴だ」って言ってたな。


私は先生と母が離婚したと聞いて学校に行き、先生と話した時のことを思い出していた。


-「学生時代、兄貴のせいで俺の人生は最悪なものとなった」-


「もしかすると先生は「悪いのは兄貴だ」って言った時、お兄さんに関する嫌な記憶を思い出していたのかも…」


私が呟いた瞬間。


「そうです」


先生がいきなり目を開いた。


「青山さん、大丈夫ですか?」


しかし医師の問いには答えず、先生は言う。


「思い出したい流星さん達のことは思い出せないのに、相変わらず、兄貴のことという忌まわしい過去は覚えているんです」


先生の目は鋭くて冷たく、それでいて透き通っていてまるでガラスの破片のようだ。


「もう忘れたいのに、まだあの記憶は俺に影を落としてくる。あのオルゴールの送り主はきっと過去を知っている。だからこそ『復讐』という花言葉を持つアザミを添えていたんだ」


先生は一気にしゃべるが、過去とやらを知らない私にはまったく意味がわからなかった。
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