夢でいいから~25歳差の物語
校門を出てからはただ走って、走って、走った。
通りかかった公園で子供達がボールで遊んでいようが、電線の上でカラスが羽ばたこうが、橋場先生の暗めの水色の車が走る私を追い越して行こうが、気にもとめられなかったし、とめもしなかった。
青山先生に告白してフラれた。
そんな事実に比べれば、先ほど述べたようなことは遥かに小さいことだ。
いつのまにか涙が頬にこぼれ落ちていた。
まさか婚約者がいるなんて考えもしなかったから。
家に着くと母がキッチンからやって来る。
「流星、おかえり」
「…ただいま」
私は気付かれないように素早く涙をハンカチで拭う。
母、水橋睡蓮(みずはし すいれん)は微笑した。
彼女は38歳だが、マロンブラウンのロングヘアーをゆる巻きにしたヘアスタイルのせいか、彼女のはっきりとした目鼻立ちのせいかはわからないが、10歳ほどサバを読んでも十分通じる。
ただ、私の実の父、健一郎とは何かいざこざがあったらしく数年前に離婚し、現在私は母と2人暮らしである。
そんな母は私の顔を見て首をかしげた。
「どうしたの?」
「…なんでもないよ」
「それならいいけど。それより、今日はクリスマスイブでしょ?今年もわたし、腕をふるっちゃうから去年みたいにびっくりしないでよ?」
「うん」
ああ、そうか。
今日はクリスマスイブだったんだ。
いつもだったら嬉しい、母のクリスマス献立も今日だけは憂鬱にすら思えた。
通りかかった公園で子供達がボールで遊んでいようが、電線の上でカラスが羽ばたこうが、橋場先生の暗めの水色の車が走る私を追い越して行こうが、気にもとめられなかったし、とめもしなかった。
青山先生に告白してフラれた。
そんな事実に比べれば、先ほど述べたようなことは遥かに小さいことだ。
いつのまにか涙が頬にこぼれ落ちていた。
まさか婚約者がいるなんて考えもしなかったから。
家に着くと母がキッチンからやって来る。
「流星、おかえり」
「…ただいま」
私は気付かれないように素早く涙をハンカチで拭う。
母、水橋睡蓮(みずはし すいれん)は微笑した。
彼女は38歳だが、マロンブラウンのロングヘアーをゆる巻きにしたヘアスタイルのせいか、彼女のはっきりとした目鼻立ちのせいかはわからないが、10歳ほどサバを読んでも十分通じる。
ただ、私の実の父、健一郎とは何かいざこざがあったらしく数年前に離婚し、現在私は母と2人暮らしである。
そんな母は私の顔を見て首をかしげた。
「どうしたの?」
「…なんでもないよ」
「それならいいけど。それより、今日はクリスマスイブでしょ?今年もわたし、腕をふるっちゃうから去年みたいにびっくりしないでよ?」
「うん」
ああ、そうか。
今日はクリスマスイブだったんだ。
いつもだったら嬉しい、母のクリスマス献立も今日だけは憂鬱にすら思えた。