夢でいいから~25歳差の物語
一体このオルゴールの送り主は誰なんだ?


何のつもりだ?


まさか…。


頭の中に子供の頃の忌まわしい記憶がよみがえる。


「やめてよ、僕は何もしていない!」


「黙れ、お前の兄貴がやったことを考えてみろ!」


「そうだ、そうだ。この人間の姿をした悪魔め」


「う…」


当時を思い出すと今でも心臓の辺りが痛くなる。


もう40年近く経つというのに。


「ハハハハハ。哀れで、そして無様だな。なぁ、弟さん?」


「やめろ、やめろ、貴様ら!」


「青山さん!?」


叫んだ瞬間、医師が走ってくる。


「青山さん、落ち着いて下さい!」


しかし頭が忌まわしい当時に戻っていた俺は、近くにあったガラスの花瓶にオルゴールを投げつけていた。


花瓶はガシャーン!と音を立てて割れた。


小樽で買った思い出の品だというのに。


我に返ると慌ててオルゴールだけを拾った。


医師は白衣を翻して走って出ていく。


1人になると、また黒い記憶が頭に流れ込み、今度はイスを蹴飛ばす。


その時だった。


「どうして…」


聞き覚えのある声がした。


「先生!」


声の主、流星さんは泣きそうな顔で俺を見ていた。


「流星さん…」


どうしたらいいかもわからず、情けない声が出るだけだった。
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