夢でいいから~25歳差の物語
流星さんは駆け寄ってきてこう言った。


「苦しんでいるのはわかります。でも…行動でしかそれを示せないんですか?だったら私は何のために先生の隣にいればいいんですか!?」


俺の手首をつかんで叫ぶその姿に必死さが伝わってくる。


だが、それに答えることは出来なかった。


「流星さん、俺…」


しばらくして口をついて出た言葉はこんなものだった。


「ついには他人の気持ちもわからなくなってしまったみたいです。意味もなくこんなことをしてしまうなんて」


「何を言っているんですか」


「以前はこんなこと、なかったのに。なんだかおかしいんです」


「それはきっと精神的に不安定になっているからなのでは」


「そうでしょうか」


わからない。


自分はなぜこんなにマイナス思考になってしまうのだろうか。


「思い出さなくてはならないのに、思い出そうとすれば頭が痛くなってしまう。そんな自分が不甲斐ない」


「ねぇ、何があったんです?」


それは言えない。


言ったらきっとあなたはいなくなってしまうから。


「わかりました。もういいです。勝手にして下さい!」


そう言って流星さんは出ていってしまった。


「青山さん」


行かなくていいんですか。


医師はそんな目をしている。


「いいんです、もう」


真実を言っても言わなくても失ってしまうのなら、きっと言わない方が良かったんだ。


流星さんのためにも、俺のためにも。
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