夢でいいから~25歳差の物語
それから年が明け、先生は職場に復帰した。


毎日忙しいらしく、帰ってくるたびにグチをこぼす。


センター試験前だからみんなピリピリしているとか、いまだに希望する進路先が決まらない奴がいて大変だ、などなど。


私は一気にしゃべる先生の話を遮ることもなく、相づちを打ちながら聞く。


なんだか自分が受験生だった頃を思い出す。


あの時、すでに私の頭の中は先生一色だった。


今、思えばそんな状態でよく大学に受かったものだと変に感心してしまう。


「お、流星さん。初雪ですよ」


先生が外を見てはしゃいだ声をあげた。


「あ、本当ですね」


暗闇にひらひらと花びらのように散る姿はまるで白い天使のようだ。


「なんだか今日はいいことが起こるような気がします。まぁ、もう夜ですけど」


私は雪景色から目を離さずにそう言った。


「確かに。ただ、今日も来たんです」


そう言って先生はカバンから何かを取り出した。


それは例のオルゴールと、相変わらず雪のように真っ白な封筒だ。


「!」


中を開けてみると、弟切草(おとぎりそう)が入っていた。


ちなみに弟切草はカタバミくらいの小さな黄色い花だ。


しかし、季節は7月から9月辺りだったはず。


「先生、弟切草の花言葉は何でしたっけ」


「『迷信』、『信心』、『盲信』、『秘密』、『恨み』、『敵意』ですが今までの流れからして送り主が伝えたいのは最後の2つでしょうね」


渋面を作る先生。


私は次に封筒を開けた。
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