夢でいいから~25歳差の物語
「ぎゃー」


ジェットコースターで一気に落下しても、お化け屋敷とまったく同じセリフの先生。


工夫がないなぁ。


って、今の本人はそれどころじゃないよね。


「わー」


先生、どれだけ怖がりなんだか。


前に座っている中学生くらいのカップルなんて、両手を天に掲げているというのに。


そんな先生は、もうすぐクライマックスという辺りから急に黙ってしまった。


また魂が抜かれたような顔をしている。


危ないので私は左手でセーフティレバーをつかみ、右手で先生の左腕にしがみつく。


途中、うっかりかけっぱなしにしていた私のメガネが飛んでいきそうになったが、根性でなんとか最後まで死守した。


先生のメガネも異常なし。


で、先生本人は異常あり。


私の肩を貸してあげながらジェットコースターから降りる。


ベンチに座らせても、先生はまるで人形のように動かない。


そこでやはりあの時と同じく、私はおわびにウーロン茶を売店で2つ買ってきて1つを彼に渡す。


それからしばらく沈黙が続いた。


それは数時間のことにも感じられたが、はっとして時計を見ると30分ほどしか経っていなかった。


「あの」


急に先生が口を開く。


「は、はい」


私は突然のことに驚きながらも返事をした。


「あなたは…水橋流星さんですよね」
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