夢でいいから~25歳差の物語
「それはもちろん、あなたが私の夫だからですよ」


なんだか先生らしくない質問。


「不安なんです。記憶を失い、今みたいに気持ちが沈みがちなこんな奴に付き添ってくれるあなたがいつか愛想をつかしてしまうんじゃないかって。こんなにいい妻を疑うなんてバカげているのはわかっているのですが」


本人も言っていたけどなんだか先生、記憶を失ってからネガティブだな。


記憶を失うと気弱になるのだろうか、なんて思ったりした。


でも不安になることは確かだよね。


きっと笑っている時でも、私にはわからない苦しみにつきまとわれているんだ。


そしてそれはまるで影のように離れることが出来ない…。


私こそ、先生の隣にいるだけで何も出来ていない気がする。


先生の隣にいる理由って何?


記憶を失っているからそれを思い出させる手助けをするため?


妻としての義務だから?


ただ単に放っておけないから?


ううん、違う。


好きだから。


好きだから、助けたいんだ。


義務なんかじゃない。


愛しているの。


たとえ先生がもう私に好きと言ってくれないとしても、私は先生が好きだから。


だから私は先生の隣にいる。


それが理由。


当たり前すぎて、今まで考えたことがなかった。
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