夢でいいから~25歳差の物語
「次、3年5組。饗庭(あいば)、67点。青島、87点。青葉さゆり、75点、青葉千智(ちさと)、90点、石村、59点、市川、92点…」


掃除をしていると、先生のぶつぶつ言う声が聞こえてくる。


どうやらテストの採点が終わり、平均点を計算しているようだ。


私が現役だった時もあんな風に計算していたのかな。


そんなことを考えた。


「…永島公一、70点。永島裕香、94点。花咲百合枝、100点。花咲涼相(りょうすけ)、64点。氷室、55点。安田、78点。山本、80点。…よし、終わったー」


満足そうに伸びをする先生。


時計を見ると、まだ昼下がりだった。


「先生、行ってみます?」


「え?」


「私達が挙式するはずだった教会へ」


「はい」


教会へ向かっている途中、私の頭の中にはこれまでのことが、まるでアニメの、前回までのあらすじのように現れては消えていった。


先生が階段の下で倒れていたこと。


記憶を失っているとわかって戸惑ったこと。


北海道に行って目一杯楽しんだこと。


繰り返す入院。


3回届いた謎のオルゴール。


この前行った、思い出の遊園地での楽しいひととき。


「着きましたよ」


先生の声で現実の世界に戻される。


そして目の前には、あの時と少しも変わらないで堂々とそびえ立つ教会の姿があった。
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