夢でいいから~25歳差の物語
「魔王?」


私のただならぬ様子と、魔王という単語から何かよくないものを感じ取ったのだろう、美綺さんの表情が険しくなった。


そうだ、魔王のことはまだ話してなかったんだっけ。


そこで私はこれまでのことを話した。


「その魔王という人はいったい何を企んでいるんでしょうか」


「わかりません。しかし、先生の身を考えると警察には話せませんし、どうすればいいのやら」


「アドレスとか変えたらどうですか?」


私は首を横に振る。


変えてもどうやって調べたのか、またメールが来るのだ。


「困りましたね。警察にも言えませんし」


「ええ。でも私がさらに無視を続ければ、犯人も手応えのない奴だと思ってやめてくれるような気がするのですが」


私の言葉に美綺さんは首をひねる。


本当は、私だってそう簡単にやめてくれるとは思っていない。


だが、他に術(すべ)がないんだ。


仕方ないじゃない。


そのまま暗いムードを拭いきれないうちに、夕方になった。


「そろそろ帰りましょうか」


「はい。そうですね」


「それでは」


「ごきげんよう」


美綺さんと別れていつもの道をなんとなく歩いていると、人混みにまぎれて見覚えのある顔が見えた。


「あの人は…」
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