夢でいいから~25歳差の物語
私はその人に話しかけた。


「鹿沢くん」


「おぉ、水橋か。久しぶりだな」


彼、鹿沢ショウスケは私の大学時代の友達。


大学3年生の時の北海道旅行にも同行していた。


「あ、水橋…じゃない。結婚したんだったよな」


少し大人びた顔を赤らめて、照れたように頭をかく子供のようなしぐさ。


以前と変わっていない。


「そうだよっ」


結婚式にちゃんと出席してくれていたくせに、と思ってちょっとすねてみる。


「なぁ、旦那さん、倒れてからどうなったんだ?」


「あれ?言ってなかったっけ」


「聞いてないぞ」


そこで私はこれまでのことを包み隠さず彼に話した。


「そんなことがあったのか。でも良かったな、記憶が戻って」


「うん」


これまでのことを包み隠さず、とは言ったが魔王のことはなんとなく話せなかった。


「じゃ、俺行くわ。また会おうな」


「うん。またね」


私達は別れた。


それからまた少し歩くと、ちょうど先生が人混みの向こうから歩いてくる。


「あれ?先生」


「おっ、奇遇だな」


一瞬、彼が微妙に動揺したように見えた。


「なんなら一緒に帰りましょうよ。私も今、帰るところですから」


「そうだな」


しばらく2人で歩いているとふいに先生が言った。


「なぁ、いきなりなんだが俺に隠し事、してないか?」
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