夢でいいから~25歳差の物語
私達が出会ったのは今年の4月。


その時の先生の第一印象は『叔父さんに似ている』だった。


そう、それだけだった。


普通の先生として受け入れていたけれど、彼を1人の人間として意識し始めたのは9月の北海道行きの修学旅行の時。


2日目のニセコ町の夜、私は点呼に来る担任の橋場和明(はしば かずあき)先生(45歳)をからかおうとして友達と準備万端で待機していた。


ちなみにいたずらの内容は、ドアノブに『起こさないで下さい』と書かれたプレートを引っかけておくだけという、実にシンプルなものだ。


そしてしばらくしてコンコンとドアを叩く音がした。


「流星ちゃん、行ってよ」


と、友達が言い出す。


仕方ないなぁ、と私。


ドアを開けるとメガネがキラリ。


おかしいな。


橋場先生はメガネなんてかけていない。


コンタクト派だ。


と、いうことは…。


私は相手をよく見る。


なんとそこにいたのは、副担任でもあり生物担当でもある青山皐示(あおやま こうじ)先生(42歳)だった。


驚きと作戦が失敗してしまってちょっぴり悔しい気持ちを隠して、青山先生の事務的な話を聞く。


全部『はい』しか言っていないから内容が頭に入っていないが。


話が終わっても彼はドアノブのプレートにまったく気付いていなかったようなので、最後に私はプレートを指さしながら言った。


「先生!」


「ん?」


「ちょっとおふざけしちゃったんですけど」


「あーそうか」


…え?


おふざけしちゃったのにそれだけですか?


さすが冷静な性格の持ち主。


このエピソードは後で、友達との間で大きな話題になり、その日は夜遅くまで青山先生の『あーそうか』の真似ばっかりしていたのだった。


…北海道まで来て何やってんだ、私達は。
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