夢でいいから~25歳差の物語
Secret3 素直になれない…
あのクリスマスイブから3ヶ月近くの月日が流れた。


「母さん」


「何?」


「私、これから…秋留ちゃんのところに住む!」


「ええっ!?」


こうして私がいとこのお姉ちゃん、吉澤秋留(よしざわ あきる)の家に住みつくことに決めたのは、まだ肌寒さの残る3月のことだった。


理由は、大学生になったら1人暮らしをしたいので親離れの練習をしたいから。


…というのは表向き。


本当の理由は、母と先生が楽しそうに話しているのを見るだけで苦しくなるから。


私はフラれたけど、気持ちはまだ残っている。


それどころか一層強まるだけ。


だけど進む勇気も戻る度胸もない。


だから私はこの恋から「逃げる」んだ。


私は先生が好き。


母とは事実婚とはいえ、「お父さん」なんて呼べるはずがない。


あきらめきれない。


だから無理矢理断ち切る。


会うことも少なくなればきっと自然に終わる。


たとえ時間はかかっても。


そうして春休み、家に秋留ちゃんが迎えにやって来た。


ちなみに彼女は大学2年生になる。


出発の時、私は後ろを振り返って17年間住み慣れた我が家を見た。


この家とも当分お別れか…。


この恋心が消えるまでここには帰れないのだ。


「さよなら」


呟いて、母と先生の声援を背中に受けながら秋留ちゃんと歩き出す。


こうして私は慣れ親しんだ我が家から無理に旅立った。


先生への思いを消すために。
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