夢でいいから~25歳差の物語
結局、引き下がらない矢野に恋愛関係は無理だが友達ならいい、と言って早々に彼女を家に帰した。


「青山先生、大変でしたね」


学校でいえば職員室にあたる部屋に戻ると、1つ年下の春日井先生がポニーテールを揺らしながら話しかけてきた。


「えっ、見ていたんですか?」


思わず目を丸くする。


「すみません。たまたま通りかかったら、会話が聞こえてきたので気になってしまいまして」


「そうですか」


「えっ、何?何かあったのか?」


突然、森山が会話に割り込んできた。


「なんでもねぇよ」


こいつに本当のことをバラすとろくなことがない。


「なぁー、教えてくれよ。オレとお前の仲だろ」


森山は、なれなれしく俺にべたべた引っ付いてくる。


まったく、ただでさえ暑いのによけいに暑苦しくしやがって。


「どんな仲だよっ」


俺達のやりとりを苦笑しながら見る春日井先生の視線が、実は針なのではないかと思うくらい痛かった。


「なぁ、ところで青山。上着はどうした?」


「あっ」


矢野にかけてやってからそのままだ。


今さら外に出ていって彼女を追いかけ、「おーい、矢野。俺の上着を返してくれ~」だなんて言うのもまぬけなので、そのまま知らないふりをしてその日は終わったのだった。
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