夢でいいから~25歳差の物語
「ねぇ、先生」


数日後、塾で小テストの採点をしていると矢野がやってきた。


「ん?」


「このカバン、どう思います?」


「うわあぁぁ」


そこにはブランド品のバックがあり、俺は貧乏人丸出しで腰を抜かしてしまった。


「あ、あぁ…いいんじゃないか?カッコいい感じで。それよりほら、この前の小テスト、また100点だったぞ。よくやったな」


早口で言って100点の答案を彼女に押しつける。


「ありがとうございます。では、何かごほうびを下さい」


彼女は丁寧な口調でおねだりをしてきた。


「えー?他の奴らにだってごほうびなんかやったことないんだけどな。やっぱり教師たる者、生徒には平等じゃなきゃ」


「あたし達、友達なんですよね?だったらいいじゃないですか」


「うーん」


「じゃあ、デートして下さい」


「矢野さん、友達同士でデートはしません。デートは恋人同士でするものです」


急に改まった口調になってみる。


「つまらないなぁ」


膨れっ面の矢野。


「しかも矢野さん、あなた小学生なのに何デートだなんてませたことをおっしゃっているんですか」


「だから子供扱いしないで下さいよ」


ますます膨れっ面になっていくのが面白かったが、気の毒なのでからかうのはここまでにしておいた。


「じゃあ、先生」


「ん?」


「デートはもういいです」


「うん。賢明な判断だ」


思わず本音がポロリ。


「その代わり」


「その代わり?」


「好きって言って下さい」
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