夢でいいから~25歳差の物語
「流星」


先生の声が私を現実の世界に戻す。


「ん?」


「ありがとう」


その瞬間、風が吹き抜けて闇に溶け込んだ先生の髪がやわらかく揺れた。


「先生…」


「真相を受け入れてくれてありがとう。あの時、銃を向けられたのに守ってくれてありがとう。こんな俺を愛してくれてありがとう」


「やだなぁ…。先生ったら」


嬉しすぎて涙が出そうだった。


こんな時に言うなんて反則だよ。


「先生のバカ…」


泣かせないでよ。


「泣き虫だな」


先生は笑って私を抱きしめ、背中をポンポンと叩く。


「先生のバカ。大好き」


「なんだ、そのセリフ。ツンデレか?」


「違うもん。なんでそんなこと言うの」


「だってそう思ったから」


「もう、やだ」


私はすねてみせた。


「あ、見ろよ」


言われるがままに先生が指さす先を見る。


「あ…」


ちょうど夜明けだった。


朝日が並ぶ建物達を照らし、なんとも言えない光景だった。


「綺麗だね、先生」


「お前の方がな」


「バカッ。恥ずかしいこと言わないでよ。先生なんかもう嫌い」


性懲りもせずあの遊園地で花火を見た時のセリフを言うんだから、この人は。


彼はただ軽やかに笑っていた。


「あのさ、先生」


「ん?」


「もう私を置いて行かないでよ。今度また1人で抱え込んで勝手に死のうとしたりなんかしたら許さないんだからね!」


それだけ言って私は走り出す。


「さっき嫌いって言っていたくせに。やっぱりツンデレか」


先生はそう言って爽やかに微笑み、私の後を付いてきた。
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