夢でいいから~25歳差の物語
「本当にそうだね」


少し遅れて私は言った。


冷静に考えてみればあの状況でよく先生をかばうことが出来たな、と思う。


もし今、銃なんか見たら足がすくんでしまうのではないか。


それもきっと先生の言う、家族を思う気持ちなのかな。


失いたくない。


そう思ったから先生の前に立ちはだかった。


「本当に人の心を奮い立たせ、掻き立てるのは誰かを大切に思い、守りたいという気持ちなんだね」


「ああ」


私のセリフに先生はしっかりうなずく。


「人生は何があるかわからない。明日、私が落とし穴に落ちるかもしれないし、10年後、悪の大魔王を倒して世界に平和をもたらすかもしれない」


「なんだ、そりゃ。悪の大魔王とかRPGかよ。しかもお前は勇者役か。いいとこ取りだな、おい」


先生はくすくす笑った。


「いや、だから例えだよ。例え」


私がここで先生がRPGを知っていることを意外に思ってしまったことは内緒だ。


「あーそうか」


あっ、なんとまさかの「あーそうか」の登場だ。


なんて懐かしい。


最後に聞いたのは先生がまだ記憶を失っていた時だったな。


まぁ、あの時は私が言わせたんだけどね。


「なぁ、流星」


「ん?」


「今までひどいこと言ったり、危険な目にあわせたりしてきた。それでもお前は俺の隣にいてくれるか?」


「言ったでしょ。先生と一緒にどこまでも行くって」


何のためらいもなく言うと、先生は安堵したように微笑んだ。
< 254 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop