夢でいいから~25歳差の物語
校長先生の挨拶が終わって「それでは先生方が入場します。皆さん、大きな拍手をお願いします」と生徒会の人が言うと、出入口からぞろぞろと異動する先生達が入場した。


その中にはやはり青山先生の姿もあった。


ああ。


全部夢だったらいいのに。


あたしの気持ちも知らずに先生はキリリと引き締まった表情を見せている。


まるで自分の運命を覚悟しているような。


その凛々しさに胸がますます高鳴る。


あたしは拍手するのも忘れて先生達の行列を見ていた。


自分を取り巻く、拍手を送られ、送り続ける世界に1人取り残されているような感覚だった。


でも、取り残されたっていい。


むしろもし今、拍手したらこの突然の別れを認めてしまうような気がする。


そんな些細な意地で現実を変えられないことはわかっているのに。


あたしは青山先生の挨拶が始まるまで、今までのことを思い返していた。


放課後に2人で取り留めのない話をするだけで楽しかった。


青山先生を好きになってから、どういうわけか体調が悪化することがなかった。


なのに別れてからは、まるで頃合いを見計らったかのようにまた入院ばかり。


きっと先生と恋愛していた間は精神的に豊かになれたんだね。


「それでは青山先生、お願いします」


ついに青山先生の番。


あたしはすっと顔を上げた。
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