夢でいいから~25歳差の物語
Special episode 冬-凍てついた想い(流星24歳、皐示49歳)
美綺さんの事件から数ヶ月後。


冬になった。


私、青山流星はいつものようにニート生活を送っている。


いい加減、先生に頼るのもみっともないので定職に就こうとは思うが、やりたい仕事がない。


おまけに今は100年に1度と言われる大不況だ。


今のコンビニのバイトをやめたら、いつ新たな働き口が見つかるかわからない。


私はいったいなんのために大学を出たんだろう。


今さらながらそう思ってしまった。


なんと情けない。


冬の風が吹いて落ち葉が音を立ててさらに哀愁が強まる。


私はマフラーをきつく巻き直して帰路についた。


「お帰り」


家では先に帰っていた先生が温かな笑顔で迎えてくれた。


「ただいま」


さっきまで悩んでいたにも関わらず、自然と笑顔になるのを感じる。


「夕食はもう出来ているぞ」


先生はそう言って冷蔵庫からサラダを取り出し、そして鍋を温め直し始めた。


「先生、この匂いはシチューかな?」


「お、よくわかったな」


「やったあ」


ちなみにこの「やったあ」は匂い当てクイズに正解したからではない。


今日は特に寒い日だったので、そんな日にシチューが食べられることが嬉しかったのだ。


「さあて、一緒に温まろうぜ」


「うわ、それ寒っ」


「あっ、失礼な」


私達の仲は相変わらず良好だった。
< 309 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop