夢でいいから~25歳差の物語
-病院-


私はベッドに横たわって眠っている先生に目をやった。


彼は奇跡的に全治2週間のケガだけで済んだらしい。


病室にはいまだ眠っている先生と私と私を心配した三七子ちゃんだけ。


実は、彼女にだけは青山先生が私の義理の父親になったことを話していたのだった。


「先生、ごめんなさい。私、「会いたくない」なんて言っちゃった。そして…「父親として見れない」とも。なのに先生は私を助けてくれたよね」


眠っている先生は答えない。


「…ねぇ」


三七子ちゃんが話しかけてきた。


「ん?」


「先生のこと、本当に父親として見れていないの?前から言ってたし、春休みに先生にひどいことを言ったって後悔してたよね」


「正直…ね。私、どうしてもそれだけは認められない」


「え?」


「認められないんだよ…どうしても」


先生が好きだから。


大好きだから、認めたくないの。


メガネ越しの先生が涙で滲む。


「流星ちゃん…」


三七子ちゃんは寂しげに言った。


「三七子ちゃん。私ね、クリスマスイブの課外が終わった後、先生に告白したの」


「えっ!?流星ちゃん、先生が好きだったの?」


「うん。いつのまにか惹かれていた」


「そうなんだ…」


「でも先生は母の婚約者…いや、もう配偶者だね。いくら事実婚って言っても私の想いは届かない」


「…」


「だからこれが運命だって思うことにしたの」


三七子ちゃんはこんな私をどう思っただろう。


愚かだと思っただろうか。


本当は運命だって思うことなんか出来ないのに。


なのに私はこんなことを言っている。


嘘をつくことさえも下手なくらい不器用なくせに。


でも…。


これが精一杯の


私の強がり。
< 31 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop