夢でいいから~25歳差の物語
「…」


顔を離して先生の顔を見ると、お風呂から上がった時みたいに赤い顔をしていた。


おまけに耳まで真っ赤だ。


いたずら成功。


そんな私も久々の長いキスに陶酔し、頭の芯がぼーっとしていたのだけれど。


そしていくらなんでも公共の場でやりすぎてしまった、と猛省した。


照れを隠して先生をいじってみる。


「真っ赤だなあ。先生ったら本当に照れ屋なんだから」


「なっ、朝からこんなことをするお前もどうかと思うぞ」


「なによ、いいじゃない。先生だって途中から…」


その時、ふいに視線を感じた。


思わず右を見ると、そこに友里さんが棒立ちしていた。


「はっ、すみません。見苦しいところをお見せしまして」


私と先生が急いで頭を下げると友里さんは笑い出した。


「流星ちゃん達、面白いわね」


「あはは…」


笑うしかなかった。


人がまわりにいないと思ってしたのに、まさか真横で見ている人がいたなんて。


かなり恥ずかしい。


「じ、じゃあ俺は帰るな」


「う、うん。また後でね」


慌てて先生を帰し、友里さんと2人きりになっても無論、気まずさは消えなかった。


「あなた達、とてもラブラブなのね」


「いやぁ、そんな」


「本当にうらやましいわ。あんな素敵な旦那さんがいて。わたしなんて16歳の時から…」


「え?」


「16歳の時から、恋は捨てたの」


そう言う友里さんの静かに悲しみを湛えた顔は、とても冗談とは思えなかった。
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