夢でいいから~25歳差の物語
「恋を捨てた?」


「うん。だからうらやましいの。あなたが」


私はなにも言えない。


ただ友里さんの寂しげな表情が悲しい。


ただ、この「あなたが」という言葉に私が思うより深い意味が込められていたことに、気付くことはなかった。


そして友里さんは結局、忘れ物を持ってまた帰っていったのである。


「あーあ」


帰り道で私はぶつぶつ言っていた。


この「あーあ」には2つの意味がある。


友里さんに恥ずかしいところを見られてしまったこと。


そして友里さんを先生に会わせてしまったこと。


その2つ。


特に気にしているのは後者である。


普段からあんなに気にしていた先生を間近で見て、友里さんはどう思っただろうか。


何か特別な感情を抱きはしなかっただろうか。


誰が誰をどう思おうが勝手なことだが、相手が先生となると気にせずにはいられなかった。


先生のことになると異常に敏感になってしまう。


特に相手が女性の場合は。


少しでも隙を見せると、いつか友里さんに先生を寝取られるのではないかとあらぬ妄想を繰り広げる私を、先生も友里さんも不思議そうに見ている。


それでも私は自分の思考の世界の中で1人暴走する日々を送っていた。


だから、友里さんからあのような誘いを受けた時も非常に警戒したのだ。
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