夢でいいから~25歳差の物語
時間は虚ろに過ぎていった。


もう夜も更けている頃だろう。


吹雪はまだ止まなかった。


「止まない吹雪はないよ」


そんなことを言ってみるけれど、何の役にも立たなかった。


私はごろんと横になる。


目を閉じてみても怖くて眠れなかった。


小屋がガタガタと不気味な音を立てて怖かった。


寝てしまったらネズミに耳をかじられそうで怖かった。


何より私を襲う不吉な予感が怖かった。


頭の中で消える、先生の笑顔。


捜しに行こうか。


そう思うけれど今、飛び出したら間違いなく遭難する。


今のように運良く山小屋が見つかるとも限らない。


我ながらこんな猛吹雪の中、よく屋敷を飛び出す気になったと思う。


「家族を思う気持ち、それは時に人の心を激しく掻き立てる…」


美綺さんの事件の後の先生の言葉が蘇る。


家族を思う気持ち、か。


そういえば先生のことになると、私はいつも無理なことばかりしていた。


17歳のクリスマスイブの時も、指輪を失くした時も、美綺さんの事件の時も、そして今も。


臆病なくせに、バカみたいに自分から危険なことをしては先生に迷惑をかけた。


いっぱい困らせた。


そしてこれからもまた、繰り返してしまうのだろうか。
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