夢でいいから~25歳差の物語
「旦那さんなら、あなたが屋敷からいなくなった直後に帰ってきたわよ」


「か、帰ってきたぁ!?」


意外な答えに思わずバカでかい声で叫んでしまった。


「なんでもあなたが見当たらないからここを出たのかと思って外を捜していたみたいだけど、吹雪いてきたから帰ってきたってわけ」


「私は先生が消えたと思って外に捜しに行ったんですけど…」


「あなた達、入れ違いになっちゃったのね」


「…」


私の苦労はいったい。


「そうそう。これ、入り口付近に落ちていたんだけど」


みずきさんが白衣のポケットからケータイを取り出した。


まぎれもなく、なくしたと私が1人で騒いでいたものだ。


「あ、ありがとうございます」


開いて時間を見る。


夜中かと思ったが、実際は朝の6時3分だった。


私は小さく息を吐き出してケータイを閉じ、頭を下げた。


「すみません。みなさんにご迷惑をおかけして」


「いいのよ。姉からあなたがいなくなったって聞いた時はびっくりしたけど、無事で良かった。本当に」


そう言うみずきさんの目には優しい光が宿っていた。


「それに、姉もすごく心配していたのよ」


「友里さんが?」


聞き返すと彼女はこくりとうなずいた。
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