夢でいいから~25歳差の物語
「彼は罪を犯した。しかも何の罪もない人を殺めてしまった。下らない理由で」


「!?」


いきなり語られた衝撃的な事実に私は閉口した。


「しかも遺族の方々に謝罪もしないで刑務所の中で1人で死んでいったのよ」


「え、まさか」


私の頭の中でパズルのピースが組み合わさっていく。


16年前、殺人、刑務所の中で死んだ男、先生に似ている人…。


「友里さん、その人って」


「名前は青山謙逸。たったの3ヶ月の付き合いだったけどわたしの最初で最後の恋人よ」


「…!」


そんな偶然があるの?


まさか先生のお兄さんが友里さんと関係があったなんて。


「そんなのは言い訳ね。あなたには本当に悪いことをしたわ」


そう言って立ち止まってペコリと頭を下げる。


「いえ…」


私が答えに窮していると、友里さんは続けた。


「あの人がいなくなってからわたしは1人ぼっち。謙逸さんの代わりになる人なんていなかった」


彼女の視線が遠くなる。


遠い時間の向こうにいる自分を見ているのかもしれない。


「でも、どうしてかしらね。あれから16年も経つのに彼が生きているような気がするの」


「…」


「わたしの中で、わたしの記憶の中であの人は生きている」


笑みさえ浮かべる彼女をただ見るしかなかった。


彼女が今いるのはきっと私が立ち入ることの出来ない世界だから。
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