夢でいいから~25歳差の物語
「人を殺したことは死んでも償えない。残された人の痛みは決して癒えない。でも、今になると時々思ってしまうの。なんで彼の気持ちに気付けなかったのか、なんで隣にいながら暴走を止められなかったのか…」


後悔。


それは残された時間の中にある人を苦しめ、悩ませる。


「遺族の方々がこれを聞いたら怒るでしょうね。あの人達の中では、青山謙逸という人間イコール自分の欲望のために人を殺す奴だっていう方程式が成り立っているから」


友里さんは16年前、遺族の方々に謝罪に行ったのだが剣もほろろに追い返されてしまったそうだ。


しかし、それより私にはわからないことが1つあった。


「どうしてそんなに友里さんに迷惑かけたのに、彼のことを16年間も思っていられるんですか?」


直後、実にぶしつけな質問だったと気付き、私ははっと口を押さえる。


友里さんは私のそんな様子など気にかけることもなく言う。


「どうしてかしらね。確かにつらいこともあったけど、彼の存在がかけがえのないものであったことは確か」


「…」


「彼だけは見かけじゃない、わたしの心を愛してくれた。こんなにずるくてそれでいて脆弱な心を…」


友里さんの頭の中は16年前にタイムスリップしたのか、目頭から流れ星がこぼれ落ちた。
< 337 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop