夢でいいから~25歳差の物語
「このコンビニはね、謙逸さんと初めて出会った場所でもあるの」


「えぇ!?そうなんですか」


「今までもバイトしてるような生活じゃダメだって何回も思った。でも、謙逸さんとの思い出の場所だから離れたくなかった。本当はお金があるからっていう理由じゃないの。消えた彼の面影をいつまでも追いかけていたかったのよ」


「…」


「だけどね、それじゃいつまで経っても16歳のわたしのまま。死んだ人にとっては現世の人に忘れられてしまうのと、ずっと記憶に留められているのとどちらが幸せなことかはわからない。だけど、決めた」


友里さんは悟りきったような顔をしている。


「彼のことは簡単には忘れられない。16年前の人だけど、今もわたしの胸の中で生きているから。でもね、これはなんでも他人に決めてもらっていたようなわたしが、前に進まなくちゃと思って下した決断なの」


立て板に水の勢いで紡ぎ出される言葉に私は圧倒されていた。


友里さんの目の奥には揺るぎない決意が見られて、私なんかではとても入り込めないような世界が広がっていた。


お疲れ様でしたって笑顔で送りたかったのに。


目の前の現実は笑えないことで。


私は最後まで寂しい表情を隠しきれぬまま、友里さんを見送った。


決意したような彼女の瞳の光が私の中で強く残って離れなかった。
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