夢でいいから~25歳差の物語
「人を愛するって何なんだろうね」


私は先生の隣に座り、自分のコーヒーを一口飲んだ。


「何だろうな」


彼は考えている。


こうしているとなんだか美綺さんの事件の後のことを思い出す。


あの時は人生について考えたんだっけ。


友里さんは先生のお兄さんを16年間ずっと愛していた。


2人の人間を手にかけてしまった先生のお兄さんも、彼女を心から愛していた。


たった3ヶ月の付き合いだったというのにその2人の絆はものすごく深い…。


私は思った。


友里さんが十字架を下ろせる日はいつかきっと来る。


彼女の去り際のあの揺るぎない瞳の光。


あれだけ強い意志を持って生きられるならたぶん大丈夫。


そう信じたい。


再び外を見ると、いつのまにか日は沈んでいた。


いびつな形の月が空の闇を切り取ってその場に佇んでいる。


「…どうやったらあんなに強く生きられるのかな」


私の漏らした言葉に先生は答えた。


「さあな。でも希望とか気持ちを強く持っていればいいんじゃないか?」


その言葉の真偽は定かではないが、先生がそう言うならそれでいい気がした。


生きたいという意志がどこかにあるからこそ、目標に向けてがむしゃらに突き進めることが出来ると思うから。
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