夢でいいから~25歳差の物語
それはきちんと三つ折りにされた手紙だった。


かなり古いもののようで、白いはずの紙が日焼けしたような茶色に変わっている。


「なんだ?これ」


先生はそれをつまみ上げた。


「なんだろうね」


「まあ、見てみるか」


私達はその古い手紙を読んだ。


青山栄作様 青山紅葉様


私達の息子である青山謙逸は人を殺しました。


それも何の罪もない人を手にかけたのです。


そのせいで、私達の家は嫌がらせの電話が鳴りやみません。


誹謗中傷の手紙も毎日届きます。


ひどい日は窓ガラスが割られていたこともありました。


謙逸の弟である皐示は毎日心にも体にも傷を負って学校から帰ってきます。


いったい私達はどうすれば良いのでしょうか。


なぜこのような苦しみを与えられなければならないのでしょうか。


…わかっています。


息子がこうなったのはおそらく私達親が無力だったからでしょう。


もう生きる資格なんてありませんよね。


大事な子供を殺人犯にさせてしまったのですから。


責任は私達が取ります。


こんなことをして勝手なのはわかっていますが、お許し下さい。


皐示をよろしくお願いします。


そして


さようなら


1966年5月17日


青山章嘉 青山楓
< 348 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop