夢でいいから~25歳差の物語
他人の家だということを忘れて私達は引き出しを更に漁った。


すると同じような封筒がまるで手品のように何枚も出てくる。


一部は輪ゴムでまとめられていた。


どれもやはり差出人と宛て名は一致している。


「一番古いのは1966年12月26日。で、最新のものは1979年3月25日。これ、先生が大学を卒業した月だ」


「じゃ、俺が小学4年から大学4年の時までの約12年間に渡って送られていたのか」


どの封筒の中にも中身がない。


「一体何が入っていたんだろうな」


「わからないね…あれっ」


私がそう言いながら何気なく手にした1975年4月2日の消印のある封筒にだけ手紙が入っていた。


「どれどれ」


青山栄作様 青山紅葉様


先日の皐示が大学に合格したとの知らせを聞いて嬉しく思っております。


本当は面と向かっておめでとう、と言ってあげたいのですが私達には彼に会う資格がありません。


いつも通り、15万円の仕送りをさせて頂きます。


青山章嘉 青山楓


「ご両親は先生に仕送りしていたんだね」


なるほど、この1ヶ月ごとに送られてきた封筒の中身は先生の養育費ということか。


「なあ、俺が大学に合格した知らせって文面からして親父達があいつらに教えたってことだよな」


「うん」


「ということは親父達はあいつらと連絡を取っていたってことじゃないか?」


「確かに」


私が頷いた時、外で車のエンジン音がした。


どうやらお義父さん達が帰ってきたようだ。


「このこと、親父達にぶつける」


そう言った彼の表情は少し強張っていた。
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