夢でいいから~25歳差の物語
「うーん、この辺かな」


あの後、お義父さんから住所を教えてもらった私達はそのまま車で青山家を訪ねることにした。


が、しかし。


「ここ、どこだ?」


「わかんない」


2人とも方向音痴なゆえ、すっかり迷ってしまったのだ。


「カーナビくらい付けるべきだったな」


先生は頭をかいた。


「それにしても驚いたね。先生のご両親の家、銀星高校にわりと近いだなんて。まさに灯台下暗し」


住所が似ているので最初に見た時は目を疑った。


「本当だな。それにしても近いってことはなんとなくわかるんだが、正確な場所がわからない」


「だよね」


私が苦笑した時、通りかかった家の塀に青山という表札が見えた。


「先生、ストップ!」


「ぉうっ!?」


ブレーキ音を立てて車が止まる。


後続車がいなくて良かったな、本当に。


「ね、ここじゃない?」


「ここか?でも青山なんてありふれた名前だしなあ」


「まあそうだけど」


そこは本当に普通の一軒家だった。


駐車場にはシルバーに塗られた乗用車が1台。


「!?」


先生の顔色が変わる。


「先生、どうしたの?」


「あの車の中のおもちゃ…」


よく目を凝らすと、後部席にミニカーが置いてある。


元は赤だったのだろうか、小さな車体は褪せた朱色になっていた。


「あのミニカーに見覚えがあるの?」


「ああ。俺が小学校低学年の頃、気に入っていたやつだ」


「じゃあ、やっぱりここが…」


私は思わず息を飲む。


行方不明と思われていた先生の本当のご両親が、この扉の向こうにいるんだ。


「行こう」


緊張を隠しきれない感じで先生が言った。
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