夢でいいから~25歳差の物語
「今考えると、俺も積極的に探すべきだったのかもしれない」


帰りの車の中、先生はぽつりと漏らした。


「え?」


「両親の存在自体は忘れられなかったわけだからさ」


「先生…」


「逃げてたんだ、きっと俺も。真実から」


「でも」


「離れてから40年という時間が経っているのに、俺は思い出しては嫌悪しただけだった。何も行動に移そうとしなかった」


その言葉に首を横に振る私。


確かにそうかもしれない。


だけど1つ、わかったことがある。


「先生は無意識に叔父さん達とお父さん達の区別、つけてたんじゃない?」


「区別?」


「紅葉さんのことはおふくろって呼んでたのに、楓さんのことは母さんって言ってた」


「…あ」


本当は叔母である紅葉さん達を親と思おうとした。


でも心のどこかではそんな簡単に割り切れなくていつのまにか父さん、母さんという呼び方を避けていた。


そう解釈している。


「お前はどうして隣にいてくれるんだ?」


助手席から夕闇の迫る空を眺めていたら、いきなりそんな質問を投げ掛けられた。


「えっ?」


思わず裏返った声を出す。


「犯罪者の弟というだけで俺は逆境に立たされた。なのにお前はそれを知ってなおこうしてここに…」
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