夢でいいから~25歳差の物語
「先生が好きなだけじゃダメかな?そばにいたいからいるのは理由にならない?」


もう何回似たようなことを言ってきただろう。


でもそれが私のすべてだ。


先生がそうして不安になってしまうなら、何度でも答えてあげよう。


「それにさ、言ったでしょ。先生と一緒にどこまでも行くって」


あの事件の時のセリフを私は忘れていなかった。


「もし、俺が犯罪者になったらどうする?」


冗談かと思って見たその顔は真剣だった。


「先生が罪を犯したら…」


少し考えて私は言った。


「そうしなきゃならなかった理由があったんだと思う」


パチッと視線がぶつかった。


「だって犯罪者の家族の気持ちや苦しみを先生は身をもって知ってる。自分勝手な理由とか出来心だけで犯罪なんかやるはずない」


「…」


先生は蚊の鳴くような声で何か言う。


今まで殺人犯の弟ってだけで愛されることを知らなかったのに今は…と言っているように聞こえた。
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