夢でいいから~25歳差の物語
ガラガラッ。
中には誰もいなかった。
水槽のエアポンプの「ガー」という音だけが存在している。
閉ざされた窓からは3月の陽射しが差し込んでやわらかな雰囲気をつくっていた。
陽射しは先生用の、木製の古めかしい机にも優しく降り注ぎ、凹凸を際立たせている。
その机に青山先生が寄りかかっている様子を思い浮かべてみる。
なんだか胸が締め付けられる思いがした。
あまりにも美しく、切なくて。
みんな、思い出になってしまう。
愉快なクラスメートとの時間も。
先生に思いを募らせた時間も。
そして、今という時間も。
キーンコーン、カーンコーン
それを裏付けるかのように3年間聞き続けた平凡、だけど切ないチャイムが鳴る。
もう教室に戻らなくてはならない。
あと少しだけここに佇んでいたい気持ちを振り切り、私は駆け足で教室に戻ったのだった。
「…波多野理可」
「はい」
「日野理早子」
「はい…」
「本間涼」
「はい!」
「真鍋翔太」
「はいっ」
「水橋流星」
「はい」
厳かな雰囲気の体育館に橋場先生と生徒の声がやけに響く。
本当にすべてとお別れなんだ。
この優しい場所も、時間も、みんなも。
「…以上で卒業証書授与式を終わりに致します」
ああ。
ついに終わってしまった。
もう少し。
もう少しだけ、このまま…。
私の思いはどこにも届かなかった。
クラスメート達の波にもまれ、ついに体育館の外に押し出されてしまった。
中には誰もいなかった。
水槽のエアポンプの「ガー」という音だけが存在している。
閉ざされた窓からは3月の陽射しが差し込んでやわらかな雰囲気をつくっていた。
陽射しは先生用の、木製の古めかしい机にも優しく降り注ぎ、凹凸を際立たせている。
その机に青山先生が寄りかかっている様子を思い浮かべてみる。
なんだか胸が締め付けられる思いがした。
あまりにも美しく、切なくて。
みんな、思い出になってしまう。
愉快なクラスメートとの時間も。
先生に思いを募らせた時間も。
そして、今という時間も。
キーンコーン、カーンコーン
それを裏付けるかのように3年間聞き続けた平凡、だけど切ないチャイムが鳴る。
もう教室に戻らなくてはならない。
あと少しだけここに佇んでいたい気持ちを振り切り、私は駆け足で教室に戻ったのだった。
「…波多野理可」
「はい」
「日野理早子」
「はい…」
「本間涼」
「はい!」
「真鍋翔太」
「はいっ」
「水橋流星」
「はい」
厳かな雰囲気の体育館に橋場先生と生徒の声がやけに響く。
本当にすべてとお別れなんだ。
この優しい場所も、時間も、みんなも。
「…以上で卒業証書授与式を終わりに致します」
ああ。
ついに終わってしまった。
もう少し。
もう少しだけ、このまま…。
私の思いはどこにも届かなかった。
クラスメート達の波にもまれ、ついに体育館の外に押し出されてしまった。