夢でいいから~25歳差の物語
Secret6 忘れられない
あれから2年の時が経った。


4月。


私は20歳。


大学3年生になっていた。


大学では新しい友達も出来たし、飲食店のアルバイトも楽しい。


今の生活を満喫していた。


大学生になってから始めた1人暮らしにもだいぶ慣れた。


そんな時だった。


母から「明日にでも帰ってこい」という内容の電話をもらったのは。


私は「明後日帰るよ」と言って電話を切った。


そういえば母に会うのも2年ぶりだ。


1人暮らしを始めてからはあの家に帰らなかったから。


いや、帰れなかったと言った方が正しい。


帰って先生に会ったらきっと…。


そう思うと帰れなかった。


だから夏休みになってもお正月を過ぎても帰らなかった。


それが明後日、母から電話をもらってしまったので帰らないわけにもいかなくなってしまった。


帰れば必然的に先生に会うことになる。


そう考えると心臓が早く稼働し始めた。


卒業式の時に見た、梅吹雪に抱かれて空を見上げる先生が頭をかすめては、相変わらず胸を締め付ける。


まるで心臓を握りつぶされているかのように痛くて苦しい。


今はそんな気分になっている場合ではない。


実は今、私は大学の友達と旅行に来ているのだ。


思い出の地、北海道。


「あーそうか」


先生のセリフが鮮明によみがえる。


まるであの時にタイムスリップしてしまったかのように。
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