夢でいいから~25歳差の物語
-翌日-


私はあらかじめ昨日のうちに決めておいた服装で駅前にいた。


白のシャツにレモンカラーの上着。


デニムの七分丈パンツとヒールが高めの黒いサンダル。


カバンはかれこれ17分悩んだが、結局ベージュのハンドバッグにした。


香水は中学時代から愛用している(気を引きたい先生が塾にいたんです。ははは…)、バラのような優しく甘い香りの大人っぽいもの。


首には高校時代から使っている、星の飾りが縦に2つつながった金色のネックレス。


そして黄色とピンクの小さなストーンをぶら下げたイヤリング。


お洒落のセンスがない私にとってはこの程度が精一杯だ。


いつもはしないメイクも、今日は特別にバッチリキメてみた。


そんなこんなで駅のホームに突っ立っていると、先生が乗っているはずの電車が朝の風と共に入ってきた。


プシューという音と同時に無数の人間がそれからはき出される。


老若男女問わず様々な人が降りてくる。


帽子を深々とかぶった人、メガネをかけた人、杖をついて歩く人、スーツを着た人、リュックを片方にだけ背負って登山客みたいになっている人…。


その中に1人だけキラキラと輝いて見える人がいた。


「おはよう」


そう言って彼は夏の太陽にも劣らないまぶしい笑みをくれた。


「おはようございます、先生」


先生の姿は学校にいた時と変わらない。


水色と青のストライプが入ったちょっとお洒落なワイシャツと濃いグレーのズボン。


黒い革靴。


ただ、ワイシャツのすき間から銀色の鎖のネックレスが見えて、不覚にもドキッとしてしまった。


しかも夏の風のように爽やかな匂いがする。


どこのメーカーの香水だろう。


「行こうか」


「はい」


こうして2人きりの1日が幕を開けた。
< 59 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop