夢でいいから~25歳差の物語
「…いやー、すごかったですねぇ。ある時は水上を駆け、ある時は空を華麗に舞うアンリミテッドフリーフォールループコースター。事前にメガネを外しておいて正解でしたね。そのまま乗ってたら確実にメガネ、池ポチャでしたよ」


「…」


「次、どうします?」


「…」


「おーい、先生」


「…」


先生の視界の中で手をひらひらさせてみるが、先生はまったく反応しない。


よほどアンリミテッドフリーフォールループコースターが強烈だったようだ。


仕方なく私はまたまた青いベンチに先生を座らせた。


そして半ば強制的にジェットコースターに乗せてしまったおわびに、売店でウーロン茶を2つ買ってきて片方を先生に渡す。


そのおかげか、しばらくして先生の顔色がいきいきとしてきた。


なんかお化け屋敷の時と展開が同じだな。


そんなことを考えてなんとなく空を見た。


いつの間にか現れた夕日は空をオレンジ色に染めている。


ベンチには私と先生だけしかいない。


2人きりというまばゆい現実が改めて頭を直撃する。


このまま永遠に2人でいれたらもう何もいらないのに。


どこからか笑い声が聞こえた。


遊園地なのだから笑い声くらい普通なのに、私の思いを笑われた気がして少し悲しくなる。


「そろそろ帰るか?」


夕日を浴びて、なんとも言えないくらいにキラキラした先生が聞く。


「まだ帰りたくありません」


つい言ってしまった。
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