夢でいいから~25歳差の物語
Secret9 それぞれの思い
「そうか…」


先生はしばらく考えていたが、やがて一言だけ言った。


「じゃ、閉園までいようか」


「ありがとうございます」


その後は色々なアトラクションを楽しんだ。


コーヒーカップは私が調子に乗って勢いよく回していたら、先生が目を回してしまった。


その後、「あのな、目が回るっていうのは三半規管の中のリンパ液が…」となぜか生物学的な説教をされる始末。


メリーゴーランドは小さな子供達に混じって乗る先生を(私が乗せたのだが)持ってきたシルバーのデジタルカメラにおさめた。


この写真は永久保存版だな、うん。


ゴーカートは私の運転が下手なせいであちこちにぶつかり、先生にさんざん笑われてしまった。


くっそう。


夕食は遊園地内の和風レストランで済ませた。


私は寿司を食べ、先生はトンカツ定食を注文。


「隙あり。いただき!」


「あっ、俺のトンカツを取ったな。だったらこうしてやる」


「わー、好物のサーモンを取られた!先生の意地悪」


「トンカツを奪った罰だ」


「ちっ、こうなるならサーモンのお寿司だけわさびを大量に塗っておけば良かったかも」


「お前、何か言ったか!?」


「なんでもないです…」


そうしててんやわんやな夕食を済ませて外に出ると、外はすっかり闇に包まれていた。


「もう夜だな」


「そうですね」


「19時59分…もうそろそろ始まるな」


「何がですか?」


聞き返したその瞬間、私の目に映ったのは空の黒をバックに咲き誇る一輪の花だった。
< 63 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop