夢でいいから~25歳差の物語
「…先生、もうよしましょうよ」


「嫌だ」


「子供じゃないんですから。もう3本プラス5杯目ですよ」


「いいの」


私はため息をつく。


先生はまだ母のことが忘れられないらしく、なんだかぶつぶつ言いながらお酒ばかり飲んでいる。


やっぱり私じゃダメだったのかな。


私はまたため息をつき、やりきれない気持ちになって250円分のキムチを一口で食べてしまった。


たちまち口の中にピリピリと強い刺激が広がったが、このもどかしさから比べれば遥かにましだった。


「水橋」


「はい」


「睡蓮さんは…」


母関係の質問、本日24回目。


「いい加減にして下さい。私がどんな思いか知っているくせに、母のことばかり」


つい感情的になってしまった。


いつもならここで謝罪の言葉が飛んでくるが、今日はそうもいかなかった。


先生は今、酔っ払ったおじさん(いや、どちらかといえばおじ様で、しかも10歳は若く見えるが)へと化しているからだ。


「だってさぁ、お前も知っているだろ~?俺が…」


「あー、はいはい。わかりました」


どうせいかに母を愛していたか語り出すんでしょう。


私はこの状況が不公平に思えた。


お互いの気持ちを知っているのに、先生だけ母の話をたくさんしている。


私が先生をいかに好きか語り出したら困った顔をするくせに。


三角関係って、恋のトライアングルってこんなにつらいものなの?
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