夢でいいから~25歳差の物語
「水橋」


「今度は何ですか」


つい声がとんがってしまう。


さっきまでは「帰りたくありません」って言っていたのに。


これではツンデレだと思われるのも時間の問題だろうか。


「お金、大丈夫か?」


「あっ」


先ほどのキムチをきっかけにやけ食いをしていた私は、実に7品の料理を食べ尽くしていた。


「ええとキムチとタコわさびが各250円、シーザーサラダが300円、湯豆腐と鶏肉の梅しそ挟み焼きが各350円、半ライスと大根おろしが各100円。お酒はカシスオレンジが350円…。ギリギリだ」


「そんなに食うからだよ」


やけ食いさせたのは誰よ!


「先生こそ大丈夫なんですか?」


「ええと確か…何とかカクテル2杯とワイン3本と芋焼酎1杯とビール2杯、枝豆が200円、唐揚げとポテトの盛り合わせが350円。うん、余裕だ」


金持ちだなぁ。


さすがは高校時代、友達と「青山先生は絶対に独身貴族だ」とささやき合っただけある。


…関係ないか。


っていうか、「何とかカクテル」って、先生も商品名忘れているんだ。


「何とかカクテルじゃなくて、アラウンドザワールドですよ」


女将さんが苦笑しながら言った。


あらら、カクテルの名前、全然難しくなかった。


1人で苦笑していたら先生がいきなりこちらを向いた。


そして私の方に倒れ込んでくる。


「わー!?」


お客さん、たくさんいるのに大胆な、と思ったが違った。


先生は寝息を立てている。


「まぎらわしいわねぇ」


女将さんがまた苦笑する。


それも知らずに彼はまったく起きる気配はなく、爆睡している。


そして、顔はまるでイチゴのように赤い。


相当酔っ払ったようだった。
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