夢でいいから~25歳差の物語
-翌日-


教室のドアを開けると、いつも先に来ているクラスメート達、男女数名ずつの顔がこちらに向けられる。


「おはよう!」


「おはよっ」


彼らとあいさつを交わし、席につく。


昨日は自分を相当追いつめてしまった。


愛なんてないだなんて思い込んでみたが、それはまったく意味を成さなかった。


むしろ気持ちが締め付けられていくばかり。


欲望だけが、風船のように肥大していく。


このままでは、破裂してしまうのも時間の問題ではないか。


ため息をつきながら古典の教科書をカバンから取り出す。


それから数学の宿題のノートも。


出す必要はないが、生物、日本史、WR(ライティング)、世界史、現代文のノートも取り出して並べる。


するとピンク、水色、緑、オレンジ、黄色、青、紫、という7種類の色を持った虹が机上に現れた。


「…」


はっきり言って、自分でも何をやっているのかわからなかった。


ただ、心のどこかで虹のように美しいものや光を求めているという気はした。


この先に続く「25歳年上の教師への恋」という名の暗い道を照らす何かを、無意識に欲していたんだと思う。


しかし、17歳の子供を青山先生が相手にしてくれるとは思えない。


年の差が激しい恋なんてマンガの世界だと思っていた。


それなのに私は今、その「マンガの世界」みたいな恋に悩み、苦しんでいる。


私、もっと早く生まれてくればよかった。


そう思わずにはいられず、さわやかな朝の賑やかな教室の中、私だけがつらそうに唇を噛みしめていた。
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