夢でいいから~25歳差の物語
Secret13 闇に消えた花嫁
「わ、私のことを覚えていないんですか?」
明らかに震えている私の声。
「すみません」
先生はそう言って目を伏せる。
「では、わたしは?」
母が問いかける。
「いえ、わかりません…」
それは実に弱々しい答えだった。
まさか。
私の中に、ある1つの単語がふっと浮かんだ。
―“記憶喪失”
「とりあえず…せ、医師を呼んできます」
いたたまれない気持ちになった私はそう言って病室を出た。
先生は忘れてしまったんだ。
母のことも私のことも。
そして、今まで紡いできた6年間の思い出も全部。
私は先ほどにもまして自分の運命を呪った。
自分の手を見る。
変わったところは特にない。
しかし、きっとここにはない。
幸せなんてこの手の中にはなくなってしまったんだ。
「流星」
母がやって来た。
その表情は、風に吹かれて揺れる水面を思い起こさせる。
母もどうやら動揺している様子で、まだ現実を受け入れられないようだった。
「母さん。私、幸せじゃなくなっちゃった」
「…」
「先生が私を忘れちゃった。だからもう愛してもくれない」
「…」
「せっかく先生と幸せになれると思ったのに私…」
「いい加減にしなさい!」
母の怒鳴る声が静まりかえった廊下に響き渡った。
明らかに震えている私の声。
「すみません」
先生はそう言って目を伏せる。
「では、わたしは?」
母が問いかける。
「いえ、わかりません…」
それは実に弱々しい答えだった。
まさか。
私の中に、ある1つの単語がふっと浮かんだ。
―“記憶喪失”
「とりあえず…せ、医師を呼んできます」
いたたまれない気持ちになった私はそう言って病室を出た。
先生は忘れてしまったんだ。
母のことも私のことも。
そして、今まで紡いできた6年間の思い出も全部。
私は先ほどにもまして自分の運命を呪った。
自分の手を見る。
変わったところは特にない。
しかし、きっとここにはない。
幸せなんてこの手の中にはなくなってしまったんだ。
「流星」
母がやって来た。
その表情は、風に吹かれて揺れる水面を思い起こさせる。
母もどうやら動揺している様子で、まだ現実を受け入れられないようだった。
「母さん。私、幸せじゃなくなっちゃった」
「…」
「先生が私を忘れちゃった。だからもう愛してもくれない」
「…」
「せっかく先生と幸せになれると思ったのに私…」
「いい加減にしなさい!」
母の怒鳴る声が静まりかえった廊下に響き渡った。