恋景色 ~真っ赤な嘘と林檎と誕生日~
「貧しい俺に、お恵みをォォォ~」
…なんてふざけた感じで言いながら、みんなからお菓子をもらってまわっているし。
あたしには実際のところ、委員長が強がってヘーキなフリをしているのか、それとも遠足にきたらピョン太のことなんか忘れて純粋に楽しんでるだけなのかは分からない。
でも、とりあえず、いつもの元気で陽気な委員長に戻ったのを見ていると、それだけでなんかちょっと嬉しいような気持ちになった。
「ブスのクセにカワイコぶってんなよ!」
油断していたあたしのポニーテールのリボンを委員長が後ろから引っ張って強奪した。
「返してよぉ」
そう言って泣きそうになりながら必死で取り返そうとするのがいつものあたし。
でも今日は黙ってデニムのスカートのポケットに手をつっこんだ。
「アレ? 怒んないのかよ?」
不思議そうな顔をする委員長。
「七森くん、きっとそうするだろうと思ったから」
あたしは全然ヨユーの表情でポケットから手を出した。