幕末オオカミ
「俺は、新撰組副長助勤、沖田総司」
「おきた、そーじ?」
聞いたこともない名前。
けど、新撰組ってのは、噂で聞いたことがある。
少し前から、幕府の政治に不満を持つ倒幕派の浪士たちが、京の町をうろつくようになった。
その浪士達を取り締まっているのが新選組だ。
元々は将軍が京に上る際の警護のため、幕府の清河八郎なる人物が江戸から集めてきた……
浪人の、集まりだ。
だから元々は、壬生浪士組という名だった。
浪人ってのは、自分の主がない、脱藩した武士のことで……。
つまり、ろくでもないやつが多い。
あたしの個人的見解だけど。
「お前は?
見たところ、忍のようだが」
沖田という人物は、短く聞いた。
つかまれた腕に、痛いほど力が込められる。
「あたしは……楓(かえで)」
「所属は」
「無い。
一族から抜けた。
路頭に迷って、つい米を盗んだ」
新撰組は、幕府直属の機関じゃない。
確か、会津藩お預かりだったはず。