幕末オオカミ
「物心ついた時には、すでにこうなってた。
お前はすぐに養子に出されたから、知らないだけで」
沖田も、斉藤先生の方をチラチラと見ながら話す。
「あー、まどろっこしいな。
近藤さん、斉藤ならいいんじゃねえか?
他のやつより分別があるし」
「そうだな、トシ。
総司、例の件は明るみに出してもいいだろう」
例の件、とはもちろん、あたしと沖田は本当は兄妹なんかじゃないという件だ。
いくら斉藤先生でも、あたしが大奥から逃げてきたことは、言えない。
「例の件とはもしや……二人の関係のことですか?」
沈黙のすきをつき、斉藤先生がさらりと言ってのける。
「へっ???」
あたしたちは、目を丸くした。
さらに斉藤先生は、穏やかな表情を変えずに言い放つ。
「アンタ、沖田の妹じゃないだろう?」
「!!」
「斉藤、なんで知ってるんだ!?」
言葉を失ったあたしの変わりに、土方副長がツッコむ。
斉藤先生は、やはり穏やかな顔で、あたしを見つめた。