幕末オオカミ
優しげな表情は、沖田の正反対をいっていると言ってもいいだろう。
大きな目に、少し丸い鼻先の彼は、首の後で髪を束ね、それが金魚の尾のように見えた。
「いえ……だってこの人、昨夜沖田に向かっておもいっきり、『沖田!!』って叫んでましたよ。
妹で、それはないでしょう。
それに……」
「ほう……それに?」
土方副長、斉藤先生を見てください!
こちらをにらまないで!!
視線が、「アホ、マヌケ」と言っているのが痛いほどわかります……。
だって、混乱してたんだもん……。
小さくなるあたしを無視し、斉藤先生は言葉を続ける。
「沖田が、襲いかかりましたから。
狼化したら、理性より本能が先に立ちます。
実の妹であれば、襲わないはずです」
「と、いうのは……?」
「近すぎる血どうしが交わっても、強い子は生まれません。
獣は、それを本能で知っています。
きっと沖田は、この人となら強い子ができると思ったか、あるいはただ欲情したかで、襲いかかったのだと」
ぬ、ぬわぁぁぁぁ!?
子だぁ!?欲情だぁぁ!?