幕末オオカミ
「やめてくれって!!」
とうとう沖田は土方副長に牙をむいた。
しかし鬼副長は、薄ら笑いながら、話を続けてしまう。
「それが、朝見たらものすごい醜女で、あとからホレられて、追い掛け回されてな!
それが有名になったら、他にも総司に夜這いをかけられた女たちが、我も我もと嫁志願してきて。
誰とも子供ができなかったのをいいことに、浪士隊に志願して、京に逃げてきたわけだ」
ぶははははは、と土方副長は爆笑。
近藤局長も笑ってる。
あたしは……どんびき。
真面目そうな顔して、やることやってるのは皆そうだろうけど。
本能のまま、好きでもない娘と……
つまり、子孫を残すようなことをしてたわけ?
しかも、責任をとらずに逃げてきたなんて。
最低だ!!
「沖田……いっぺん死ね、助平野郎!!」
「俺だって、死ねるもんなら死にてぇよ……いっそ、殺してくれ……」
沖田は畳に突っ伏したまま、情けない声を出した。
「沖田、お前を殺せるやつはそうそういない。
あきらめろ」
斉藤先生の追い打ちが、余計に沖田を起きられなくしていた。