幕末オオカミ
「沖田、今日の巡察は昼からだろう。
いっそ島原へ遊びに行ってこい」
「しつけーんだよ!!
遊女たちだって、朝は寝てらぁ!!」
「わかった、わかった。
ならば、汗を流して雑念を払ってこい」
斉藤先生にそう言われた沖田は、ぶつぶつ何かをいいながら、のしのしと大股でその場を去っていった。
「……今日は荒れるな……」
「?」
「ん?あぁ、沖田は稽古に参加するんだ。
それがアイツの唯一の気晴らしだから」
斉藤先生はにこりと笑った。
優しいその顔に朝日がかかる。
それはあたしの胸を、少しだけ躍らせた。
あーあ、沖田も、この半分でもいいから穏やかになればいいのに……。
「……楓」
「は、はいっ」
「楓と呼べばいいのか?苗字は?」
「あー、苗字はありません。
楓、でけっこうです」
「そうか……では、行こうか」
そうしてあたしたちは、蔵へ向かった。