幕末オオカミ


「おお……なにも、逆さ吊りにしなくても……」



そう言ったのは、四角い顔の男だった。


貫禄があり、ちゃんとした髷(まげ)を結っている。



「いや、よくやった、総司」



もう一人の男が、顔色一つ変えずに言った。



「忍は口が堅いからな。これくらいしねえとな」



お、鬼ー!!


その男は、沖田ほど背は高くはないけど、二重まぶたの美丈夫だった。


唇は薄く、酷薄そうな印象を受ける。



「どうします、土方さん。名前は楓。
それしか今のところわかりません」


「そうさなあ……
どうやって吐かせようか……
足の甲から五寸釘を打ち込んで、ろうそくを立ててやろうか……」



な、何でそんなに楽しそうなんだい。


土方と呼ばれた男は、にやりと口の片端だけ上げて、笑った。



「ちょ、ちょっと待ってよ。
あたしは本当の事を言ったんだ。
そいつが信じてくれないだけなんだってばー」


「?総司、こいつ何て言ってたんだ?」


「……忍の一族から抜け、路頭に迷ったそうです」





< 13 / 490 >

この作品をシェア

pagetop