幕末オオカミ
斉藤先生が行ってしまうと、蔵にはあたしと藤堂先生だけが残された。
「藤堂先生。
本当に、稽古サボっちゃって大丈夫ですか?」
「んー、大丈夫大丈夫。
しんぱっつぁんと左之さんは、そのへん適当だから。
って、できれば敬語やめてくれない?
名前も、下の呼び名でいいって言ったよね?」
藤堂先生は、不満げな顔で言う。
あぁ、可愛い。
目はくりくりしてて、白くて華奢で。
沖田とは大違いだ。
「でも……兄上が、皆さんを敬えって」
「いーよ、そんなの。はい、練習してみて?」
だから……。
その可愛い顔で、のぞきこまないで。
冷たくしたら悪いなって気になっちゃうじゃん。
「じゃあ……平助、さん?」
「んー……違うな」
「えー……じゃあ、平助くん」
「あ、それいい!もっかい呼んで!
ちょっとだけ首をかしげるのを忘れずにっ!」
何だそりゃ。
そう思っても、顔には自然と笑みがこぼれた。