幕末オオカミ


斉藤先生が行ってしまうと、蔵にはあたしと藤堂先生だけが残された。



「藤堂先生。
本当に、稽古サボっちゃって大丈夫ですか?」


「んー、大丈夫大丈夫。
しんぱっつぁんと左之さんは、そのへん適当だから。
って、できれば敬語やめてくれない?
名前も、下の呼び名でいいって言ったよね?」



藤堂先生は、不満げな顔で言う。


あぁ、可愛い。


目はくりくりしてて、白くて華奢で。


沖田とは大違いだ。



「でも……兄上が、皆さんを敬えって」


「いーよ、そんなの。はい、練習してみて?」



だから……。


その可愛い顔で、のぞきこまないで。


冷たくしたら悪いなって気になっちゃうじゃん。



「じゃあ……平助、さん?」


「んー……違うな」


「えー……じゃあ、平助くん」


「あ、それいい!もっかい呼んで!
ちょっとだけ首をかしげるのを忘れずにっ!」



何だそりゃ。


そう思っても、顔には自然と笑みがこぼれた。



< 133 / 490 >

この作品をシェア

pagetop