幕末オオカミ
本気で自分が可愛いと思ってたら、局長の『可愛らしい』発言にも、揺れなかったって。
沖田の評価は『まぁまぁ見られる』だったし。
なにより、一度も上様のお手つきにならなかったし。
……それは、言えないけど……。
あぁ……。
今さら、思い知る。
大奥での2年が、あたしの女としての自信を、すっかり失わせてしまったんだな、と。
「……可愛いのに……」
平助くんは、残念そうな顔をした。
そこまで気を使ってくれなくても、いいのにな……。
「楓、ちょっと危機感持ちなよ?」
「え?」
「誰にも相手にされないと思ってボヤボヤしてると、本当に誰かに押し倒されるよ?」
心底心配そうな顔の平助君。
それは、演技にしてはうますぎて……。
とくん、と。
心臓が、揺れた。
「大丈夫、気をつけるから……」
なんとか笑って返すと、平助君はうなずいて言った。